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ミーモデル(Mie Model)を利用した大気散乱のシミュレーション方法
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作成者:  Prolinx長嶺 [ 2009年12月28日(月) 13:36 ]
記事の件名:  ミーモデル(Mie Model)を利用した大気散乱のシミュレーション方法

はじめに

ミー理論(別称:Lorenz-Mie 理論またはLorenz-Mie-Debye理論)は、球形粒子による光の散乱に関するマクスウェル方程式の解析解を解説します。この理論は、粒子を任意の大きさにすることができます。言い換えれば、解は球の半径と波長との全ての比率に対応します。この比率が小さくなるとともに(<<1)、ミーモデルは聞き慣れたレイリー散乱の結果に類似していきます。

文献1に記述されるように、ミー理論は、靄や曇りなどの大気散乱に重要です。またこのモデルは、ミルク、ラテックス塗料、生物組織などの一般的な素材の外観を表現するのに利用できます。

ミーモデルはノンシーケンシャルモードのバルク散乱分布としてZEMAXにて実行できます。計算アルゴリズムは、著者Bohren & Huffmanによる文献2のChapter 4およびAppendix Aに提供される結果に基づいております。このモデルの入力に関してはこのトピックの次のページに記述します。ミーコードを使った大気散乱のモデリングの例はその後に提供します。

作成者:  Prolinx長嶺 [ 2009年12月28日(月) 13:37 ]
記事の件名:  Re: ミーモデル(Mie Model)を利用した大気散乱のシミュレーション方法

コード入力

ノンシーケンシャルモードの体積にミー散乱の分布を適用するには、体積のObject PropertiesダイアログボックスのBulk ScatterタブにおいてMie.DLLファイルを選択します。
添付ファイル:
Fig1_MieInputsCropped.jpg
Fig1_MieInputsCropped.jpg [ 33.2 KiB | 表示回数: 645 回 ]


このDLLは下記五つの入力が必要です。

1.Particle Index
これは(実際の)散乱粒子の屈折率です。バックグランド媒質の屈折率、すなわち粒子が置かれる媒質の屈折率は、体積のMaterialコラムで指定されたものにより定義されます。粒子の屈折率がバックグラウンド媒質の屈折率と一致する場合(屈折率の差が10^-6以下の場合)、粒子がバックグラウンドと区別できないため散乱は起きません。粒子の屈折率が、<= 0.0に設定される場合、散乱は起きません(DLLは無視されます)。

2.Size (microns)
これは球形粒子の半径(R)です。この値を<= 0.0に設定した場合、散乱は起きません(DLLは無視されます)。許容可能な最大値は、正規化された球体サイズ(x = 2πr/λ)の許容可能な最大値に基づいており、現在は1934と設定されています。正規化された球体サイズが1934を超える場合、散乱は起きません。そのような大きい球体では、ZEMAXで球体自身をモデリングするほうがより適切です。もっと正確に言えば、球体に起因する実効散乱分布をモデリングすることが適切です。

3.Density (cm^-3)
これは体積の散乱粒子の密度(ns)です。この値を< 0.0に設定した場合、散乱は起きません(DLLは無視されます)。この値を> 0.0に設定した場合、体積における散乱の平均自由行程λmfp = 1/nsσsを求めるために、コードにより計算された散乱の横断面(σs)とともにこの値が利用されます。この密度を=0.0に設定した場合、体積における散乱の平均自由行程がMean Pathパラメータ入力において指定あれた値と等しくなります(密度が> 0.0の場合、Mean Pathパラメータ入力において指定された値は無視されます)。

4.Min. thresh
ZEMAXにおける散乱計算は確率分布関数の積分を伴います(詳細は“How to Create a User-Defined Scattering Function”http://www.zemax.com/kb/articles/219/1/How-to-Create-a-User-Defined-Scattering-Function/Page1.html(英語)に記述されています)。積分は極性方向において0~π(方位角方向において0~2π)から通常は得られます。しかし、ピーク分布では、確立がゼロである角度空間の領域に対する積分を実行するには計算的に非効率です。最小閾値はユーザーにより極積分のより小さい上限を定義することを可能にします。上限は、確率分布がピーク分布のほんのわずかの割合と等しい(割合が最小閾値と等しい)際の極角空間における位置により算出されます。例えば、最小閾値が=0.01と設定された場合、極積分の上限は、ピーク確率の0.01倍に等しい確率分布の位置になります。入力値が<= 0.0 または >= 0.5と設定された場合、デフォルト値の0.001が使われます。

この値を指定する際には注意が必要です。一般的に大きい粒子の確率分布はよりピーク形状であるため、最小閾値をより大きな値に設定しがちですが、散乱計算における角度分解能は固定(0.1度)であるため確率分布がよりピーク形状になれば1つの角度から次の角度までの確率が大幅に降下してしまいます。従って、積分において用いる十分なデータポイントを確保するためには、一般的に最小閾値を小さくする必要があります。

このパラメータの適切な値を判断する最良の方法は、このパラメータが異なった場合の結果を比較することです。0.01の値から始めて、10の倍数で減少させます。結果が大きく異なる場合は、結果が収束するまで値を減少させていきます。それ以上は、値を減少させてても計算時間を増やすだけで計算精度を上げることにはなりません。

5. Transmission
これは散乱現象を受ける全ての光線の密度を減らす減衰係数です。この係数はユーザーにより、散乱球体におけるエネルギー吸収を考慮することを可能にします。バックグラウンド媒質のエネルギー吸収は、体積のMaterialコラムにおいて定義された媒質のTransmission(透過)プロパティにより決定されます(詳細は“Fitting Index Data in ZEMAX”http://www.zemax.com/kb/articles/62/4/Fitting-Index-Data-in-ZEMAX/Page4.html(英語)に記述されています)。
散乱粒子に対する屈折率の架空コンポーネントが吸収に影響を与えますが(DLLにおけるTransmission入力により特徴付けられます)、このコンポーネントは散乱の確率分布にも影響を与えます。しかし、架空コンポーネントのマグニチュードが~ 10^-2またはそれ以上の(極めて吸収率の高い粒子に相当する)場合にだけ確率分布に影響を与えます。よって、散乱分布における架空コンポーネントの影響はここで紹介されるミーモデルでは無視されます。

最後に、AngleパラメータはこのDLLでは使用されませんがAngleパラメータの値が<= 0.0 または > 180.0として設定された場合、散乱はおきません(DLLは無視されます)。

ミー散乱分布は、散乱粒子の屈折率とバックグランド媒質の屈折率との比率(m = nparticle/nbackground)および正規化された球体サイズ(x = 2πr/λ)の二つの無次元パラメータにより特徴づけられます。ミー分布の個々の計算は、各(m, x)ペアに対し実施されなければなりませんが、これらの計算が完了した際には結果がメモリに保存され、任意の光線数を追跡するのに利用できます。最大10,000 ペアの(m,x) 値のデータをDLLで保存することができます。この限界を超えた場合には、それ以上のミーデータを保存することができず、それ以降の(m,x)ペアでは散乱が起きません。ほとんどのアプリケーションでは、10,000ペアで十分です。

作成者:  Prolinx長嶺 [ 2009年12月28日(月) 13:51 ]
記事の件名:  Re: ミーモデル(Mie Model)を利用した大気散乱のシミュレーション方法

例:大気中の散乱

ミーコードの使用を説明するために簡単な例を作成しました。この例のアーカイブファイル(.ZAR)はこのトピックの最後よりダウンロードすることが可能です。

この例では、太陽からの放射をモデリングするためにSource Ellipseが用いられています。この光源のスペクトル分布は、黒体温度(Blackbody temperature)により定義されています(詳細は“How to Model Colored and Tristimulus Sources”(英語)に記述されています)。
添付ファイル:
Fig2_SourceModel.jpg
Fig2_SourceModel.jpg [ 59.12 KiB | 表示回数: 612 回 ]


太陽を表現するためにSurface 3で5780Kの温度が選択されています。

Rectangular Volumeオブジェクトが大気をシミュレーションするために用いられ、大気の観察色を計測するためにDetector Color オブジェクトが用いられています(詳細は“How to Measure and Optimize Color Data”(英語)に記述されています)。もう一つのDetector Colorオブジェクトは太陽のスペクトルの観察色を提供するために用いられています。この基本例はスケーリングのためではなく、このサンプルシステムでミーコードの使用方法を説明する目的だけに作成されていることに留意下さい。

このシステムは二つのコンフィギュレーションで定義されています。Configuration 1では、Mie.DLLに入力されるパラメータは、散乱のレイリー限界を表現するモデルになるように定義されています (正規化された球体のサイズ<< 1):
添付ファイル:
Fig3_MieInputs_RayleighLimit_Cropped.jpg
Fig3_MieInputs_RayleighLimit_Cropped.jpg [ 28.32 KiB | 表示回数: 611 回 ]


水の屈折率に対応するように粒子の屈折率として1.33を使用しています。Rectangular Volumeオブジェクトで定義されている媒質はありません。即ちこの体積は空気でできています。従って、このモデルは空気中の水滴による散乱を表現しています。

各水滴のサイズは7 nmです。可視波長(0.4~0.7mmのλ)では、正規化された球体サイズは、0.063~0.11の間(レイリー限界に相当する<< 1)です。粒子密度は、このシステムでは散乱の平均自由行程がおおよそ数mmの散乱自由になるように定義されています(このデータはDLLによりレポートされませんが、コードの社内精密調査により算定されました)。

このシステムで1千万本の光線追跡後、大気の色が結果として青色であることが確認できます。これはレイリー限界における散乱の強い波長依存(1/λ^4)に起因されます(詳細は“Bulk Scattering with the Rayleigh Model”(英語)を参照してください)。
添付ファイル:
Fig4_Rayleigh_results.jpg
Fig4_Rayleigh_results.jpg [ 40.12 KiB | 表示回数: 614 回 ]


この色は、メリットファンクション上でNSDEオペランドを使って色座標により特徴づけることが可能です(詳細は“How to Measure and Optimize Color Data” (英語)を参照してください)。
添付ファイル:
Fig5_NSDE_results_Rayleigh.jpg
Fig5_NSDE_results_Rayleigh.jpg [ 79.78 KiB | 表示回数: 63 回 ]


これらの値と(メリットファンクション上で第7および8行目に示される)太陽のスペクトルとを比較すると、レイリー散乱の限界において発生する色のシフトが明確に認識することが可能です。

Congiruation 2において、レイリー限界からミー領域にシステムを移動するために散乱粒子のサイズを大幅に大きくしています。
添付ファイル:
Fig6_MieInputs_MieLimit_Cropped.jpg
Fig6_MieInputs_MieLimit_Cropped.jpg [ 28.17 KiB | 表示回数: 609 回 ]


Configuration 1と同様に散乱の平均自由行程が~数mmを維持するように粒子密度を減らしています(再びこのデータはDLLによりレポートされませんが、コードの社内精密調査により算定されました)。この大きな粒子限界において確率分布が適切にサンプリングされることを確保するために最小閾値も減らしています。

このコンフィグレーションで1千万本の光線追跡後、放射の色が光源のスペクトルとほぼ同等であることを見ることができます。
添付ファイル:
Fig7_Mie_results.jpg
Fig7_Mie_results.jpg [ 37.29 KiB | 表示回数: 611 回 ]


この結果はNSDEオペランドを使って定量的に確認することができます。
添付ファイル:
Fig8_NSDE_results_Mie.jpg
Fig8_NSDE_results_Mie.jpg [ 79.44 KiB | 表示回数: 59 回 ]


これらの結果は、ミー領域では散乱分布が少ない波長依存であることを示しており、文献4の記述と一貫しています。これらの結果はなぜ太陽に近い光が白く(即ち太陽と同色に)見えるかを説明しています。またこれらの結果は雲がなぜ白く見えるか説明します。雲を作りだす水滴は大気を作り出す微粒子より遥かに大きいため(微粒子はこの例では水としてモデリングされていますが、実際には窒素と酸素からなります)、観察色は太陽光が雲で散乱してもシフトしませんが、大気で散乱した場合にはシフトします。

作成者:  Prolinx長嶺 [ 2009年12月28日(月) 16:57 ]
記事の件名:  Re: ミーモデル(Mie Model)を利用した大気散乱のシミュレーション方法

参考文献:
1.http://en.wikipedia.org/wiki/Mie_theory
2.Craig F. Bohren and Donald R. Huffman, "Absorption and Scattering of Light by Small Particles", John Wiley & Sons (1983).
3.http://en.wikipedia.org/wiki/Sun
4.http://hyperphysics.phy-astr.gsu.edu/Hbase/atmos/blusky.html

添付ファイル:
Scattering_through_the_atmosphere.ZAR [227.88 KiB]
ダウンロード回数: 67 回

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